命の水が育んだ、桜の名所【花のコラム】
江戸時代、灌漑用のため池として造成され、農業用水としてこの地を潤した3つのため池が、今は約70品種、およそ1000本もの桜が咲き乱れる公園として市民の憩いの場所として人気だ。
■紹介するスポット
神奈川県立三ツ池公園
※本コラムは、かながわガイド協議会構成団体である「NPO法人神奈川歴遊クラブ」より寄稿いただきました。
INDEX
三ツ池公園はため池だった
かつて三ツ池公園のあるこの辺り一帯は鶴見川の流域で、稲作を中心とした農村地帯であった。昔から水はけの悪い低湿地で水害に悩まされる一方、日照りが続くと旱魃にも悩まされ、各地で雨乞いが行われてきた歴史がある。近くの師岡熊野神社には永安4年(1174年)、高倉天皇の勅命により延朗上人が境内の「い」の池で雨乞い神事を行った記録が残っており、農民たちは鶴見川周辺にため池を多く造成することで、この困難を切り抜けてきた。この三ツ池公園も江戸時代に造成されたため池が起源となっており、命の水として大切に守られてきている。
三ツ池の誕生
三ツ池公園はその名の通り、「上の池」、「中の池」、「下の池」の三つの池からなり、広さは29.7haと、なんと東京ドーム6個分。「下の池」の畔にある石碑は天保14年(1843年)に建てられたもので、三ツ池の水が広い田んぼに引かれても涸れることがない恵みの水であると詠われている。昭和32年に総合公園として設置された。現在「さくら名所100選」、「かながわの公園50選」、「かながわの探鳥地50選」、「かながわの未来遺産100」に選ばれた。
四季の花々
三ツ池公園では、春になると「さくら名所100選」に選定された約70品種、およそ1000本のさくらが出迎えてくれる。寒緋桜から染井吉野、大島桜…。河津桜、八重桜など早咲きから遅咲きまでさくらを長く楽しむことができる。春にはスミレ、モクレン、夏にはヤマユリ、カンナ、半夏生、ムクゲ、サルスベリ、秋にはキンモクセイ、クズ、ハギ、ススキなど四季折々の花々が競うように咲き誇る。
公園内の施設
公園内にあるコリア庭園は、神奈川県と韓国・京畿道(キョンギド)の友好提携(1990年)を記念して建設された。朝鮮半島の地方豪族の代表的な建築と庭園の様式を取り入れて作られており、朝鮮半島の文化への関心や理解を深める場となっている。その他にもテニスコート、軟式野球場、多目的広場や休憩施設などがあり、夏期にはプールも解放されて都会の中のオアシスともいえる貴重な環境を提供している。また自然環境を活かした豊かな樹林の中を散策すればハイキング気分を味わうこともでき、家族連れで訪れる方も多数。季節を問わず花や樹木を楽しめる公園なので、一度訪問されることをお勧めしたい。