恩賜箱根公園に咲く夏の花【花のコラム】
「皇室ゆかりの地」である恩賜箱根公園には、一年を通じて四季折々の美しい花々が楽しめます。今回は、特に6月~7月にかけての夏の花をご紹介します。
■紹介するスポット
神奈川県立恩賜箱根公園
※本コラムは、かながわガイド協議会構成団体である「NPO法人東海道ウォークガイドの会」より寄稿いただきました。
恩賜箱根公園の前身は「箱根離宮」
「恩賜箱根公園」は「かながわの景勝50選」に選ばれた箱根の景勝地。芦ノ湖の南岸にある塔ヶ島という半島上に位置し、明治時代に造営された「箱根離宮」の跡地に広がっています。一年を通して、四季折々の美しい花々が咲く手入れの行き届いた庭園内を散策でき、富士山と芦ノ湖の絶景も合わせて楽しむことができます。特に湖畔展望館2階のバルコニーから望める景色は、まさに感動的な一瞬をもたらしてくれるでしょう。
恩賜公園の前身は、明治19年(1886年)に造られた「箱根離宮」とその庭園。明治17年(1884年)皇室の避暑地として、また避病の地として建議されたことに始まります。当時日本に招かれていたドイツ人の医学者、ベルツ博士の勧めを参考にして、伊藤博文が「箱根離宮」を建設することを建議しました。博士は予防医学の重要性を説き、箱根をはじめ、日本各地の保養地や温泉地の調査と研究を行っていました。
公園のシンボルは湖畔展望館
大正12年(1923年)の関東大震災、昭和5年(1930年)の北伊豆地震などの影響により、「箱根離宮」の規模が縮小されました。昭和20年(1945年)神奈川県に下賜され,、その翌年から県立恩賜公園として一般公開のために、公園の整備が進められます。現在では、歴史の名残と芦ノ湖、箱根外輪山、富士山などの眺望を楽しめる景勝地として、多くの人々に親しまれる公園へと生まれ変わりました。当時の「箱根離宮」の西洋館をイメージした湖畔展望館は、公園のシンボルとなっています。平成25年(2013年)には、近代造園文化の発展に寄与したことが評価され、「国登録記念物(名勝地関係)」に登録されました。
初夏に咲く弁天の鼻展望台のツツジの群生
初夏になると、弁天の鼻展望台の周辺に咲き乱れる遅咲きのツツジに圧倒されます。この展望台は、かつての箱根離宮の馬場があった場所。眼前に広がる芦ノ湖と、遠くに望む富士山の雄姿とは対照的に、展望台を囲むピンク色のツツジとのコントラストがとても印象的です。
「神奈川県の花」ヤマユリの大輪の甘い香り
7月中旬~8月上旬の真夏になると、ヤマユリの見応えのある大輪の花を見ることができ、辺りには甘い香りが漂います。恩賜公園の駐車場から中央門をくぐり抜けて、中央園路の階段を上がっていくと、ヤマユリの大輪が出迎えてくれます。中央広場の隣に位置する休憩所の前には、ヤマユリの群生が見られ、訪れる人の目を楽しませてくれます。この休憩所には、靴を脱いで寛げる東屋と芝生の広場があり、遠足やピクニックの昼食利用にピッタリの場所で、ヤマユリの甘い香りに包まれながら食事を楽しむことができます。
ヤマユリは、縄文時代からの日本固有の百合で、本州の平地から山地に分布し、日陰がちの斜面や明るい林や草原に見られる球根植物。強い香りのある花径20cm強の大きな花を1~10輪ほど咲かせます。花弁には白地に黄色い帯状の筋が入り、えんじ色の細かい斑点が散りばめられているのが特徴。茎は斜めに伸びて高さは120~200cmほどになり、その先端に開く花は見た目の姿の豪華絢爛さと、甘い香りで大変人気があります。箱根にお越しの際は、ぜひ、恩賜箱根公園にも足を伸ばしてみてくださいね。