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横浜市新子安の千草庵【歴旅コラム】

横浜市新子安の千草庵【歴旅コラム】

神奈川県指定銘菓「千草庵の本煉羊かん」

  • 神奈川県指定銘菓 本煉羊かん
横浜市神奈川区で唯一「神奈川県指定銘菓」に選定されている菓子匠・千草庵をご紹介します。千草庵は新子安に立地している、昔の面影を残す和菓子の老舗です。

ところで、新子安とはどのようなところだったのでしょうか。

江戸時代にはすぐ傍を東海道が通っていました。現在の国道15号線です。近くには日本橋から数えて6番目の東子安村一里塚(日本橋から24キロ地点)が設けられており、道中奉行に命じて、測量を基に詳細に作成された絵図「東海道分間延絵図」に描かれている遍照院や、『新編武蔵風土記稿』に記載のある一之宮神社も現存しています。東海道のすぐ向こうは海で、白砂青松の景勝地だったようです。

幕末の横浜開港以降、状況は一変します。明治後期からは埋め立てが進み、この辺りは瞬く間にビル群に囲まれてしまいました。
  • 千草庵
そして現在、JR新子安駅から少し山側に入ったところに趣のある店構えの千草庵があります。創業は昭和6年(1931年)、今年90周年を迎える老舗です。初代滋治さんは茶の湯・謡曲・仕舞鼓等に造詣が深く、また、日本画家・俳人として知られる飯田九一が主宰する俳画の会「香蘭会」にも入会されていました。そうしたことが「茶席菓子の千草庵」の礎となっているとのことです。

屋号の「千草庵」は、著名な禅僧の詠んだ歌“引き寄せて 結べば草の庵にて 解くれば元の 野原なりけり”の一句と、父上の名・千次郎から“千”の1字を貰って命名されました。

現在の建物は、昭和25年(1950年)、初代が宮大工の棟梁・川田庄助と木材集めから始めて再建された数寄屋造りの建物。ビル群の中にあって際だって趣きがあり、テレビドラマにも登場しました。「千草庵」の扁額は総持寺の貫主、建長寺の管長より揮毫を賜ったものとのことです。

店内には、手作りにこだわって丁寧にこしらえられた美しいお菓子が、常時30種類くらい並んでいます。

特に存在感を示すのが、昭和29年(1954年)に神奈川県指定銘菓に選ばれた「千草庵の本煉羊かん」。ほんのり優しい味で、葉がくれ梅(小倉)・端山の月(栗)・鴬笠(うす茶)・こぼれ雁(しそ)・こがね鼓(柚子)の5種類があります。包装紙の文字は飯田九一に書いて頂いたものだそうです。
  • 季節の和菓子花びら餅(1月)
また、1月から12月まで、それぞれ3種類を揃えた「季節の和菓子」はとても優雅な和菓子です。都の春(3月)、花筏(4月)、夏木立(7月)、わび助(12月)等、典雅な名前がついていますが、これらは、歴代のご当主達が心を込めて名付けたものです。
  • 季節の和菓子の絵(1~3月分)
絵心豊かな先代・正明さんが自ら描いた「季節の和菓子」の絵が3ヶ月ずつ店内に掲げられています。掛け紙も、正明さんが季節にあった題材を選び、ご自身で描きました。
  • 和菓子の掛け紙

季節感が失われて来つつある現代社会に暮らす私達ですが、時には本煉羊羹や季節の和菓子とお茶で、ゆったりした時を過ごすのはいかがでしょうか。

記事提供:NPO法人 神奈川区いまむかしガイドの会

(記事公開日:2021/2/26)

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