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山口蓬春記念館の庭園【花のコラム】

山口蓬春記念館の庭園【花のコラム】

山口蓬春(ほうしゅん)記念館の庭園は、京都府出身の造園師・岩城亘太郎(いわきせんたろう)が造園・作庭した、料亭を思わせるような庭園です。蓬春が自身の絵のモチーフとするため、多くの草花を植えており、四季を通じて様々な花が咲き誇る花の庭園として親しまれています。

■紹介するスポット
山口蓬春記念館(旧山口蓬春邸)

※本コラムは、かながわガイド協議会構成団体である「葉山町文化財研究会」より寄稿いただきました。

山口蓬春記念館(旧山口蓬春邸)

山口蓬春は、東京美術学校(現・東京芸術大学)日本画科に学び、独自の新日本画の世界を築きました。戦後の昭和22年(1947)葉山町・堀内に、昭和23年(1948)現在地(葉山町・一色)に転居して、昭和46年(1971)葉山の地で77歳の生涯を閉じました。平成2年(1990)山口家より土地、建物及び所蔵作品の寄贈を受けた財団法人JR東海生涯学習財団(現・公益財団法人JR東海生涯学習財団)では、その偉業を永く後世に伝えていくことを目的に、平成3年(1991)山口蓬春記念館を開館しました。

山口蓬春の経歴

山口蓬春(本名・三郎)は、明治26年(1893)北海道松前郡松城町(現・松前町)に生まれ、日本銀行員だった父の転任に伴い大正2年(1913)東京府(現・東京都)にある私立高輪中学校を卒業後、大正4年(1915)東京美術学校(現・東京芸術大学)に進学しました。当初は西洋画科でしたが大正7年(1918)西洋画科を退学し、日本画科専科入学後本科へ転科し大和絵を習得しました。大正15年(1926)斎藤春子と結婚し、昭和5年(1930)帝国美術学校(現・武蔵野美術大学の前身)教授に就任しました。昭和10年(1935)あらゆる団体から脱退し、独自の制作活動に専念しました。昭和20年(1945)東京大空襲を受け、山形県に疎開し、終戦後帰京できず昭和22年(1947)葉山町の山﨑種二の別荘に転居し、昭和23年(1948)葉山町に住宅を購入し、終生葉山町に居住しました。

山口蓬春の歩み

東京美術学校日本画科を首席で卒業し、大正12年(1923)、師・松岡映丘(えいきゅう)が率いる新興大和絵会に参加しました。大正15年(1926)、第7回帝展出品の《三熊野の那智の御山》が特選となり、帝国美術院賞をも受賞。、作品は皇室お買い上げとなり、画壇への華々しいデビューを飾りました。
その後、新興大和絵会の活動に限界を感じ始め、昭和5年(1930)六潮会(日本画家、洋画家、美術評論家からなる流派を超えた団体)を結成し、絵画領域を広げていきます。戦後は新日本画への姿勢が打ち出され、フランス近代絵画の解釈を取り入れた知的でモダンなスタイルを確立しました。その後、代表作《春》《夏》《秋》《冬(枯山水)》を発表、昭和40年(1965)には文化勲章を受章しました。

国登録有形文化財(建造物)への登録

山口蓬春記念館(旧山口蓬春邸)主屋と画室が令和5年(2023)国登録有形文化財(建造物)に登録されました。葉山町一色の相模湾を見下ろす、別荘が集中する南傾斜面にあり、昭和23年(1948)山口蓬春が吉田五十八(いそや)の助言により購入した自邸です。寄棟造桟瓦葺の東西棟は平屋建て、南東隅を二階建てとし、南と東に張り出す茶の間棟・風呂棟は吉田五十八の設計。、施工は水澤工務店で増築しています。画室は主屋の西側に南面しており、著名な画家の画室を手掛けてきた吉田五十八最後の画室建築です。室内は大壁とし細かな線を排除し、床を一段下げた南のベランダ境には天井までの引込み障子(壁面に引き込まれて見えなくなる設計)を取り入れています。蓬春と東京美術学校同窓の吉田五十八との共作による近代数寄屋の画室です。

庭園

吉田五十八による増築がひと段落した後の昭和35年(1960)、京都府出身の岩城造園・岩城亘太郎により庭園が整えられました。庭園空間としては、画室の前に広がる芝生と植栽が主体の主庭園、画室の裏手にある枯山水庭園、桔梗の間の前の露地庭園の3箇所です。主庭園には伊東深水から贈られたと伝わる豊後梅、橋本明治より貰い受けた苗から育った福島県三春町の滝桜(枝垂桜)、徳川慶喜の孫・徳川慶光に譲り受けた「高松宮別邸(現・神奈川県立近代美術館葉山)」にあったミモザアカシア(従来のミモザアカシアは絶えてしまい、開館時以降に植えたもの)、そして春子夫人が好んで手入れした草花など様々な植物が植えられています。平成27年(2015)岩城造園により「庭園の再生が図られた」のが現在の庭園です。

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