三浦海岸の河津桜並木【歴旅コラム】
河津桜
京浜急行電鉄の三浦海岸駅を出て、線路沿いに西に約10分程歩くと、河津桜並木が見えてきます。ここから小松ヶ池公園までの約1kmには、約1000本の河津桜が植えられています。菜の花も同時に咲き並び、ピンクと黄色の鮮やかな色合いが、一足早い春の訪れを感じさせてくれます。
この河津桜は、「三浦海岸まちなみ事業協議会」が静岡県河津町から苗木を購入し、平成11年(1999年)から4年間かけて植樹したもので、今では、2月上旬から3月上旬の早春を彩る三浦海岸の風物詩として欠かせないものになっています。
小松ヶ池の伝説
面積約1.5haの小松ヶ池は、三浦市最大のため池で、渡り鳥の飛来地にもなっています。オナガガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、バンのほか、メジロ、カワセミなど沢山の野鳥が見られます。少し待っていると、カワセミが水面に飛び込んで小魚を咥え、土手の茂みに入って行く姿を見ることができます。翡翠色のかわいい姿に時間を忘れてしまいます。
優しい風情の小松ヶ池ですが、この池には悲しい伝説が残されています。
「昔、働き者で心やさしいおマツというお嫁さんがいた。ある日、姑から広い田に1日で苗を植え付けるように言われます。おマツは休みも取らず働きましたが、太陽は西に沈んでいきます。おマツは、『植え終わるまで太陽を沈めないでください。代わりに私の命を差し上げます。』と一心に祈りました。すると、沈みかけた太陽が再びあがり、全部植えることができました。しかし最後の一本を植え終わったとき、疲れ果てたおマツは田の底へ沈んでしまいます。そして、おマツが植えた苗は秋が来ても実りませんでした。祟りを恐れて近くで田を耕す人がいなくなり、草ぼうぼうの荒れ果てた池になって、夜になると女のすすり泣きが聞こえた。」というのです。
嫁の名をおマツと言ったことから、この池は「小松ヶ池」と呼ばれるようになったということです。
桜まつり
三浦海岸の駅前に戻ると、駅前広場では「桜まつり」が開催され、地元の有志の人たちによる歌や踊り、点茶を楽しむこともできます。特設テントには、ダイコン・キャベツなどの地元野菜、この時期が旬の生わかめ、大根焼酎、トロまんなど、三浦自慢の特産物が並びます。そして夜になると、線路沿いや駅前の桜がライトアップされ、昼間とは違った幻想的な夜桜を楽しむことができます。
※令和2年度の桜まつりは新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止とされました。
また、京浜急行電鉄の企画する、特別お花見列車や河津桜ラッピング電車の運行などが、桜まつりを一層盛り上げてくれます。しあわせの黄色い電車と呼ばれている「イエローハッピートレイン」と河津桜のコラボ写真はぜひ撮りたい最高のショットです。
駅前から南方面に足を伸ばすと、「三浦市南下浦市民センター」があり、「海防陣屋跡」の石碑があります。海防陣屋とは江戸幕府が異国船の渡来に備えて作った陣屋で、長州藩の伊藤博文や木戸孝允(桂小五郎)も守りにあたっていたそうです。
さらに南に歩くと、三浦海岸に出ます。房総半島や船が行き交う東京湾が目の前に広がり、冬の海岸には漬物用に大根が干されています。海水浴で賑わう夏と違って、のんびりとした時間が過ぎていくようです
記事提供:みうらガイド協会
(記事公開日:2020/12/18)